Japana Sociala Forumo
99年2月1日、テレビ朝日「ニュースステーション」で民間研究所が所沢産農作物のダイオキシン濃度が高い結果が得られたと公表しました。所沢市内の野菜から 0.64〜3.80pg/g のダイオキシンが検出され、厚生省の全国調査 0〜0.43pg/gを大きく上回ったというのです。それまで、JA所沢市が既に所沢産野菜を測定していたにもかかわらず、国の基準がないことを理由に公表を拒否していましたので、大きな反響がありました。
放送後早速、放送では「ほうれん草などのはっぱ物」という曖昧な表現をしたため、ほうれん草の価格が暴落、青果市場や埼玉県内の大手スーパーなどが、所沢産やさらに埼玉県産の野菜類の取り扱いを中止する動きがでてきました。埼玉県によると、損害額は、10日までで、所沢市産ほうれん草が約4千万円、埼玉県産野菜全体(28品目)で約3億円にのぼるとのことでした。
その後、野菜は最高でも 0.75pg/g であり、最高値 3.80pg/g を検出した「農作物」は「煎茶」だったことが判明しました。乾燥した煎茶は水分の多い野菜に比べ「グラム当りの濃度」は計算上数値が高くなるのは当たり前でした。
このときの行政の対応は素早かったのです。所沢市は3日、県に対して農作物調査などを要望。県は4日、所沢産野菜の緊急調査を早急に行い、来月中に結果を公表することを表明。翌5日には「ダイオキシン類の野菜等に対する汚染問題対策会議」を設置した。環境庁も5日、所沢産野菜の緊急調査を行う方針を示しました。この間、小渕恵三首相は国会内で所沢産のホウレンソウを試食し、同地産の野菜の安全性をPR?しました。
このあまりに素早い対応に対し、毎日新聞は次のような疑問を呈しています。
──同市の市民団体「きれいな空気をとりもどす会」の小谷栄子代表は「野菜調査や流入規制など、私たちがどんなに要求してもどうにもならなかった施策が、次々と実現しそうな勢いには驚いた。農家が実際にダメージを受け、一丸となって行動したのが、行政を動かしたと思う」と話す。実際、ダイオキシン汚染を気にしながら、農作物が売れなくなることを心配して息を潜めていた生産者は多かった。生産者と行政の迅速な対応は、すでにダイオキシンに強い危機感を持っていたことを物語っているが、それならなぜ、先に手を打てなかったのか、という疑問は残る──(99年2月17日、毎日新聞東京版より)
9日になって、JA所沢市は独自で実施した野菜のダイオキシン調査について公開しました。畑のほうれん草で 0.22〜0.43pg/g、出荷場のもので 0.087〜0.14pg/g。これは厚生省による全国調査(0.044〜0.43pg/g)と同レベルでした。
この後、報道が変質していきました。新聞、週刊誌、テレビが連日、「この」ダイオキシン問題を報道しました。『週刊文春』(99・2・25)は「ダイオキシン汚染報道 久米宏よ、なぜ謝罪しない!」、『週刊新潮』(99・2・25)も「とんでもないことをやってくれた『久米宏』」とテレビ朝日バッシングを行い、日本テレビ、フジテレビなども「ニュースステーション」の報道は不用意、配慮を欠いたものだと厳しく批判、所沢農民が激怒してテレビ局に集団抗議を印象付ける映像を流したりしました。テレビ朝日に押しかけた農民にとって本来の敵は、焼却炉を放置してきた行政側にあったはずです。この問題で最も喜んだのは批判を浴びずにすんだ自民党や官僚たちであったに違いありません。
テレ朝を批判した各社も自ら所沢産野菜を測定することもなく、データの公表を拒み続けたJAや「産廃銀座」状態を放置してきた政府を批判することもなく、ひたすらテレビ朝日バッシングに終始しました。ここに、「ダイオキシン騒動」鎮圧のチャンスが生まれたことを見逃すことはありませんでした。所沢ダイオキシン報道を利用して、その批判の矛先をテレビ朝日による報道被害問題にすり替え、メディア規制強化に口実を与えることになってしまったのです。もう既に「ダイオキシン特需」のレールは敷かれており、行政不信につながる「騒動」はもうこれ以上必要なかったのです。
編集/安濃一樹
ヤパーナ社会フォーラム
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