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CO2 を削減する新しい稲作

今野茂樹

京都議定書が発効して、二酸化炭素 CO2 の削減に関心が高まっています。そうした中、秋田県農業試験場(秋田農試)大潟農場が行った「水稲不耕起栽培の環境負荷評価」の中間報告は非常に興味深いものでした。不耕起栽培とは文字通り農地を耕さずに作物を栽培することです。この方法は人為的に土を掘り起こさないから、より自然条件に近い作り方といえます。

長所をいくつか挙げてみると、トラクターで土を撹乱しないのでミミズや昆虫の卵・微生物などが生き残ることができるため、生態系の底辺が維持されるわけです。水田では赤とんぼの数が約7倍に増えました。また、田んぼを泥水状にしないことで濁水や肥料が河川や湖沼に流出する問題が少ない。そして、水田から出ている温室効果ガスのメタンが3〜4割少なくなるというように環境にとって大きなメリットがあるといわれています。


不耕起の田植え

秋田農試の調査は、その中で水質汚濁量と CO2 の発生量からその農法自体の環境負荷を評価しようとしたものです【1】。報告によると次の結果が出ています。

(1)水質汚濁について、水稲不耕起栽培は水田からの表土流出が従来のわずか1.5%に激減し、同時に窒素・リン酸・炭素の流出も約10%に削減できる。

(2)メタンや CO2 の排出量調査では、栽培期間中のメタン発生量を CO2 に換算して算入すると同時に、使用する農機具や農薬・肥料等、資材の製造段階で排出されたCO2も算入しています。その計算では不耕起栽培は全期間を通じて1ha 当たり1700kg(暫定値)の CO2 を削減できる。

それではこの1700kg/ha の CO2 削減量とはどれくらいの量なのか。わかりやすいように説明すると、ガソリンに換算して732リットル、軽油では649リットルの燃料を消費したときに発生する CO2 に相当します。これが事実であれば相当大きな数字といえるのではないだろうか(ちなみに我が家では6ha が不耕起栽培なので、ガソリン消費を年間4392リットル削減していることになる)。

仮に日本の全水田が不耕起栽培に変われば年間289万トンの CO2 を削減することができ、これは日本の削減目標の3.7%に相当します。米の生産額がGDPに占める割合は0.6%なので、それと比較してみると、不耕起稲作がもつ CO2 削減効果の大きさがわかります。

ところが稲の不耕起栽培が普及する見通しはというと、不耕起栽培とはどんなものかほとんど知られていないのが実情でしょうから、限りなくゼロに近いかもしれません。栽培が広がらない理由はいくつか考えられますが、一番大きな障害は、川や空気をきれいにしても農産物に付加価値がつかないことではないだろうか。


牧草の種を蒔いてから苗を植える

現在の市場経済の中で農産物に求められるものは、「安全」や「安心」であったり、「きれいで大きさや形が揃っている」もの、「消費者が喜ぶ」もの、つまり商品として売れる農産物であって、「水や空気をきれいにしている農産物」では流通に乗ることはできないのです。

地球温暖化が顕著になっている現在、安全や安心・安い・きれいという評価だけでなく子供たちの将来のためにも食べ物を通じて温暖化防止に取り組もうとする農産物を評価できる仕組みが必要ではないでしょうか。

【1】不耕起栽培には、雑草防除にヘアリーベッチという豆科植物を組み合わせた方法や冬期湛水、除草剤を使ったものなどがありますが、今回の報告は除草剤を使った体系のもです。近年、宮城県や新潟県では「ふゆみずたんぼ」と呼ばれる冬期湛水方式不耕起が広がりをみせています。干拓地の大潟村では冬に水を溜めることが難しいので、別の方式である豆科牧草ヘアリーベッチを利用した不耕起栽培が行われています。

編集/安濃一樹
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