Japana Sociala Forumo

捏造されたテロ事件

安濃一樹

2002年11月13日、朝日新聞が特派員メモとしてインドのテロ事件を報じた。首都ニューデリーの高級ショッピングセンターで銃撃戦があり、二人のテロリストが警察に射殺された。インドではテロ行為が頻発している。今回の事件では警察が、買い物客を標的とした無差別殺人を瀬戸際で阻止したことになる。

朝日の特派員は娘が通う保育所の父母会で、「安全のため映画館にも行かない方がいい」との声が出始めたことをあげて、「テロが家族の憩いの場も子供の遊び場も奪っていく」と記事を結んでいる。

日常生活の場に迫りつつあるテロに多くの市民が恐怖を抱いたに違いない。特派員はその事情をよく伝えている。しかしインド新聞各紙の報道によると、事実は大きく異なる。事件は警察によって捏造された疑いがある。 

なぜテロリストの顔に暴行されたような青あざがあるのか、など不信な点がいくつもあげられたが、注目すべきは目撃者の証言である。現場となった地下駐車場にいたハリ・クリシュナ医師は次のように証言している。車から出てきた容疑者ふたりは足取りもおぼつかない様子で、武器は持っていなかった。警察がいう銃撃戦はなく、私服警官が一方的に彼等を射殺した。警察に電話で脅迫され身の危険を感じた医師は警察の出頭要請を拒否している。彼は政府の人権委員会に調査を依頼した。

事件後、インド政府は即座にテロリストはパキスタン人であると断定し、警察の対テロ活動を褒めたたえていた。カシミール地方の帰属をめぐりインドとパキスタンは抗争をつづけている。目撃証言が真実とすると、インド政府は仇敵を誹謗するためにテロ事件を捏造してしたばかりでなく、自国の市民を脅迫するために恐怖を演出した。

日本の拉致問題でも、政府とメディアが国民の怒りや恐怖を煽るような報道をしていないだろうか。恐怖が心に住みつけば、 人びとは安全を求めるあまり戦争さえ肯定し、自由や権利を一つひとつ手放してゆく。アメリカの現状をみれば、そのことを容易に納得できるはずだ。テロによって私たちが失うものは計り知れない。

2002年11月25日

編集/安濃一樹
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