Japana Sociala Forumo
「北朝鮮による拉致」集会
2005年5月8日、「北朝鮮による拉致被害者を取り戻す福岡県民集会」なるものに参加しました。マスコミ報道で伝えられる経済制裁などの主張に危ないものを感じていたので、マスコミ報道からはわからないものが見えてくるのではないかとの期待が参加した理由です。
テレビから拝見する家族会会長の横田滋氏はどこにでもいそうな田舎のやさしいおじいちゃん、妻の早紀江さんはしっかり者のおばあちゃん、というイメージです。拉致事件さえなければ田舎で平凡な暮らしをしていただろうに、そんな彼らが対北朝鮮経済制裁を主張しているのだろうか。そういう単純な疑問がありました。
会場の入り口にはダークスーツの若者が20人ほどいて、大声で誘導していました。主催者はボランティアだと言っていましたが、その姿がどうも威圧的で、どこかの会社の新入社員研修のようでした。若者はやらされてるような感じで、市民団体主催のシンポジウムとは雰囲気がまるで違います。
さらに入場時にもらったパンフレットは「アサリを買わないようにしましょう。誰でもできる北朝鮮経済制裁」という内容で、ますます気が滅入りました。経済制裁は対立を煽るばかりで拉致問題が解決に向かうとも思えないし、われわれ日本国民としてできることがアサリ不買くらいだというのは情けない限りです。始まる前に帰りたくなったけれど、とりあえず横田夫妻の話は聞いておきたいと思いました。
ところが始まってみると、入場時の印象とはまるで違う話が続きます。特定問題調査会代表の荒木氏は次のように断言しました。
──拉致被害の根本原因は日本の歴代政権・政治家の腐敗、北との癒着、日本警察の無能・無責任にある──
彼が拉致問題に関わるようになった当初から、警察はずっと「法と証拠に基づき厳正に捜査する」と言い続けたいたという。しかし、最近拉致被害者に認定された田中実氏の例をとり、田中氏が「認定」された理由は新たな証拠が見つかったわけではなく、金正日が拉致の事実を認め、国内世論が変わったからだと警察自身が発表していると指摘しました。
荒木氏は続けて言います。
──それなら最初から法と証拠などと言わず、世論が盛り上がらないからできないと言うべきである。担当の警察官からは拉致の疑いが強いと上申しても上から潰されたという話を何度も聞いた──
なぜ拉致問題が潰されてきたかという疑問に対し、家族会メンバーのひとりは、過去に日本の政治家が訪朝団を組んで北朝鮮へおもむき何をしてきたか知るべきだといいました。具体例は口にするのも汚らしいとして、代わりに紹介した書籍があります。『泥棒国家の完成』という本でしたが、書名の紹介があっただけでした【1】。
集会後にネットで調べると、著者のベンジャミン フルフォードは米フォーブス誌の太平洋支局長を務めている方でした。内容は、現在の日本は「泥棒国家」であり、日本をダメにした「政・官・業・ヤクザ」連合という泥棒が国民の金を巻き上げ、それで延命をはかっているだけというものでした。家族会としての精一杯の政府批判だったのでしょうか。
荒木氏は、「認定作業」自体が拉致問題に国は取り組んでいますという国民向けポーズにしかすぎず、拉致問題解決に何の益もないと言い、必要なことは政府に拉致被害者を取り戻す気概があるかどうかだけだと主張しました。
家族会は主要国の要人と面会し、拉致問題解決に理解を求めてきたという。彼らは涙を流して「自分の権限を越えてでも一人の父親として拉致問題を解決しなければならない」と家族の手をとって語った。日本でこのような心のこもった反応を示した政治家はいなかった。日本政府には自国民を守るという気概はないのかと訴えました。
家族会のメンバーは会場に来ているかもしれない在日の方への配慮も示していました。
──私達の主張に気を悪くされた方があったかもしれませんが、北朝鮮の国民を非難しているのではありません。独裁者を非難しているのであって、独裁者に蹂躙されている人たちは私達と同じ被害者です──
そして会場に向けて訴えた次の言葉は大きな拍手と喝采を受けました。
──みんなが関心をもつことは次に自分の身内が被害にあわずに済むことにつながる──
来賓として登壇していた自見庄三郎(自民党)は「自民党・小泉内閣は全力で拉致問題に取り組んでいます」と叫びましたが、持ち時間を大幅に上回る自画自賛の発言に会場から罵声が浴びせられました。冷静な人は苦笑いしながらトイレに立つという抗議の意思表示をする。自見の顔が引きつってました。そして、自分の話が終わると、拉致家族の話も聞かずさっさと帰ってしまった。登壇していた福岡県議、北九州市議も3分の1が自見に合わせて退席しています。
横田早紀江さんはこう訴えました。
──小泉首相はなぜ拉致された日本人を一人残らず取り戻すと言ってくださらないのか。恵ちゃんの骨だと渡された骨の鑑定結果がわかったとき、どうして毅然たる態度を示さないのか──
ここまでの特定問題調査会や家族会の主張には経済制裁はまったく出てきませんでした。至極まともな主張であるように思えます。途中で居眠りしてしまった滋さんを早紀江さんが足でこずいて起こす姿も微笑ましかった。こんなに東奔西走してたら仕方ないよねと思いました。
入場整理をしていた若者の一人が私の横に着席すると、すぐに居眠りを始めました。ときどき起きては何かメモしていましたが、ほとんどは寝ていました。終わり間際に携帯が鳴って、「ハイッ」と返事してそそくさと出て行った。やはり彼らがボランティアなんていうのはうそっぱちだなと思いました。
最後に救う会のメンバーが登壇しました。ここから突然会場の雰囲気が一変します。救う会は北朝鮮との対決姿勢を鮮明にしていました。入場時にもらったアサリ不買運動パンフも含めて対北朝鮮経済制裁論は救う会の主張で、家族会の主張ではなかったことが集会に参加してみてはっきりしました。集会の主催者は拉致家族を利用して何かをたくらんでいるんだろうなという感じがしました。それに乗せられない拉致家族の勇気、強さに感動しました。
ところが、夜のNHKローカルニュースでは「拉致家族らは北朝鮮への経済制裁に対する理解と協力を呼びかけた」と放送していました。自分がみた光景と報道のギャップには驚きます。安倍晋三氏らはこのような報道に対しては「公正」との判断を下すのでしょうか。
2005年6月15日
いしやまやすし/ヤパーナ・メンバー
【1】ベンジャミン・フルフォード『泥棒国家の完成』光文社ペーパーバックス(2004年)。http://www13.plala.or.jp/bae/never-rise.htm
編集/安濃一樹
ヤパーナ社会フォーラム
http://japana.org/
mailto:kazuki@japana.org