Japana Sociala Forumo

評論 第149回 2004年11月15日

2004年米大統領選挙
負けたのは米国自身だ

「反動」大統領の下で

ブッシュ米大統領が再選され、上下両院での支持基盤を広げた。米国や世界に何が起きているのか。この大統領は大恐慌以降、米国に登場した断トツの最右派だ。米史上、最も強烈な反動的大統領でもある。「反動的」と言うのは、時計の針を政治的に巻き戻すという古典的な政治的意味合いにおいてである。

政権一期目から、妥協も穏健路線もとらないことを示してきたブッシュは、ブルドーザーで反対勢力はもとより、自陣営の脆弱(ぜいじゃく)な部分さえ押しつぶして目標に到達しようとしている。再選で勝ち得た「政治的資本」を使う、と彼自身が表明している通りだ。

大統領は共和党内にキリスト教右派、大企業、軍国主義者という三つの異なる基盤を持っている。そしてそれぞれが大統領に政策実現の圧力をかけている。

右派の内政圧力

キリスト教右派の関心は内政だ。同性婚の禁止を望み、これを確実にするため憲法修正を求めている。妊娠中絶の非合法化も目指しているが、合法性を認めた1973年の米連邦最高裁判決を覆さなければならない。それには多数決で決まるよう最高裁判事の新たな指名が必要だ。

しかし、これは序の口。人種主義でも時計を逆戻りさせ、米国を白人プロテスタント支配の国として再建を図る目標もある。人種差別撤廃措置に終止符を打ち、そこから移民問題、さらに投票権にまで手を付けようとしている。これは20世紀に、米国が進めてきた社会的発展をすべて帳消しにしてしまう。

もちろん、これは最も極端なグループの意図だ。だが、このグループが目下、キリスト教右派の政治構造を支配し、共和党内で極めて大きな役割を果たしていることに注目しなければならない。

ブッシュは、経済政策を脅かさない限り、キリスト教右派を支持するだろう。経済はブッシュの支持基盤の大企業にとっても、より重要度が高い。経済の保守派も税制、環境規制、医療費・社会福祉などで時計を巻き戻そうとしている。税負担を非富裕層に転嫁するつもりなのだ。既に富裕層の税率引き下げや配当課税の軽減などを打ち出してきている。当面の目標は政権一期目の大幅減税を恒久化することだ。

こうした政策を抑制する勢力は、民主党というよりは、もっと洗練された資本家階層であろう。ドル暴落と巨大な財政赤字を懸念しているからだ。両方とも株式市場の破滅になりかねない。既に一部は、政府支出の削減をしなければならないと言い始めている。その場合、短期的に相当規模の削減が可能な唯一の分野は軍事予算である。

戦争のコスト懸念

これは第三の支持基盤であるネオコン・軍国主義者の利害と絡む。彼らは米国が文句なしに世界の覇権大国だった時代に戻りたいと願っている。一期目では政権中枢を占めたが、問題は今後も政権にとどまるかどうかだ。

イラク戦争は、軍国主義者らの期待や予測通りの道をたどっていない。彼らは国内で難局に直面している。反戦運動だけではない。保守派や中間派も侵攻の愚挙とそのコストを嘆いている。米軍自体、勝利とは程遠い戦争に陥り、極めて不愉快な思いを募らせている。軍トップたちはベトナムを記憶している。

軍国主義者はイラン、キューバ侵攻と素早い前進展開を図りたいようだが、これは、打って出る可能性はほとんどない。「ならずもの国家」としての米国への敵意が世界的に拡大していることに加え、軍首脳の逡巡(しゅんじゅん)は大企業側からかなりの支持を得るだろうからだ。ビッグビジネスは、立て続けの戦争が財政を食いつぶし、経済政策を脅かすことに恐怖している。

予想できるブッシュ政策は急速に進むだろう。しかし、ブッシュは自陣営の分裂だけでなく、イラクからの撤退を迫る国際的圧力でつまずく危険がある。イラク撤退は米国内に強力な反戦運動を引き起こし、左派を再び勢いづかせるかもしれない。同時に、歴史的に左右両派に基盤を持つ孤立主義の復活も伴う。

このように長期的にはブッシュ政策は世界システムの中で乏しい展望しか持たないが、内政の見通しは当面は極めてよい。実際問題としてわれわれは、社会生活を後戻りさせるような司法を持つかもしれない。そうなれば、政治的な分極化が深刻な内政紛糾にエスカレートしかねない。2004年大統領選での最大の敗者は米国そのものなのだ。そして、米国を取り巻く世界の方が勝者なのかもしれない。

2004年11月19日 共同通信配信

イマニュエル・ウォーラーステイン

Immanuel Wallerstein, "" Commentary No. 149 (Nov. 15, 2004). http://fbc.binghamton.edu/149en.htm

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